シーズンが終わった。全18試合、波乱に次ぐ波乱の地域リーグラウンドがついに幕を閉じた。
明治安田J2・J3百年構想リーグ——秋春制移行に向けた特別な1年間。J2・J3全40クラブが4グループに分かれてホーム&アウェイを戦うこの新フォーマットで、いわきFCは**EAST-Bグループ3位(勝点31 / 7勝4PK勝2PK負5負 / 得点22・失点18)**という成績でフィニッシュした。
首位のヴァンフォーレ甲府(勝点35)には届かなかった。2位の北海道コンサドーレ札幌とは勝点同点(31)ながら、正規勝利数の差で1つ下の3位に甘んじた。ただ、この18試合を振り返ったとき、「惜しい3位」という言葉では収まりきらない、濃密なドラマがそこにある。
「EARN THIS ~勝ち取れ、自分を。~」——今季のスローガン通り、ピッチで勝ち取ったものと取りこぼしたものが、この数字の中に凝縮されている。
最終成績まとめ
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 最終順位 | 3位 |
| 勝点 | 31 |
| 試合数 | 18 |
| 通常勝利 | 7 |
| PK勝利 | 4 |
| PK敗北 | 2 |
| 通常敗北 | 5 |
| 得点 | 22 |
| 失点 | 18 |
| 得失点差 | +4 |
第1フェーズ:開幕の波乱(第1〜4節) 2勝2敗(うちPK負1)
■ 第1節(2/8) いわきFC 1-0 北海道コンサドーレ札幌
いわきでは珍しく雪が舞った開幕戦。
前半からいわきが主導権を握り、前半15分に西谷亮からのパスを受けた柴田壮介が開幕ゴールを決めて先制すると堂鼻起暉や、大注目の高卒・中野陽斗の守備陣が札幌に決定機を作らせず、完封勝利。ただ、前半13本シュート打ち1点と、今シーズンも得点不足か…と予感させる開幕戦となった。
Jリーグ参入後、初の開幕戦勝利。
【J2・J3結果まとめ】2/8百年構想リーグ開幕!新監督の初陣や雪中の激闘をレポート
■ 第2節(2/15) いわきFC 3-1 福島ユナイテッドFC
ハワイアンズスタジアムいわき、5,058人——福島ダービーの開幕戦は、いわきのJ2としての格の違いを見せつける内容だった。
16分に堂鼻起暉がセットプレーから山中惇希のクロスに合わせてヘディング先制。後半50分には山中惇希が高橋勇利也のスルーパスに抜け出して左足で追加点。試合終了直前88分には村上陽斗がダメ押し。最終スコア3-1、シュート数26本対7本——数字を見れば内容は一方的だった。
ただ、64分に樋口寛規の直接FKで1点返されたことが、後々の課題を示す伏線になる。「先制しても安心できない」——この教訓はシーズンを通じて何度も突きつけられることになる。
いわきFC vs 福島ユナイテッド|いわきFCシュート26本の猛攻で2連勝!福島ユナイテッドを圧倒し、ハワスタが歓喜に沸く
■ 第3節(2/22) FC岐阜 0-0(PK 5-4) いわきFC
4,095人が見守る長良川スタジアム。この試合こそ、2026シーズンのいわきを象徴するシーンのひとつだった。
90分間スコアレスのまま突入したPK戦。岐阜の守護神セランテスが圧巻のプレーを見せた。いわきの3本目のキッカー・高橋勇利也のシュートを「完璧な読み」でストップ。岐阜は5人全員が成功し、J3勢として開幕3連勝を達成した。
いわきは勝点1(PK敗北)。「0-0から奪われる勝点2」の重さを思い知るアウェイゲームだった。
FC岐阜 vs いわきFC|【J3勢唯一の3連勝】守護神セランテスが吠えた!FC岐阜、いわきとの死闘をPK戦で制す
■ 第4節(3/2) いわきFC 1-2 藤枝MYFC
ホームで藤枝に敗れた。11分に菊井悠介に先制されると、30分に山中惇希が同点に追いつく。しかし74分に真鍋隼虎のプロ初ゴールに沈んだ。
今季からJ3に加わった槙野智章監督率いる藤枝は「勝つためのプラン」として守備的な戦術を徹底し、いわきを抑え込んだ。この敗北で勝点1(2敗1PK負)——序盤戦はまだ手探りが続いていた。
いわきFC vs 藤枝MYFC試合結果|槙野流「勝つためのサッカー」藤枝がいわきを下し今季2勝目!真鍋隼虎のプロ初ゴールが決勝弾
第2フェーズ:怒涛の7連勝(第5〜11節) 7連勝
ここからいわきは別のチームになった。
■ 第5節(3/7) いわきFC 1-1(PK 5-4) RB大宮アルディージャ
「絶望のPK戦から大逆転」——このタイトルが一切大げさでない試合だった。
74分に大宮の泉柊椰にヘディングで先制を許し、いわきは追い詰められた。それでも83分、交代出場の加藤大晟が山中惇希のコーナーキックを頭で叩き込み同点。試合はPK戦へ。
ここで主役になったのがGK佐々木雅士だ。いわきの1・2本目をトム・グローバーに止められる危機的状況から、大宮の4番手が外れ、最後は佐々木自身がキッカーとして成功、そして大宮7番手をセーブ——5-4の大逆転勝利。この試合でいわきの守護神の存在感が際立ち始める。
いわきFC vs RB大宮アルディージャ試合結果|絶望のPK戦から大逆転!守護神・佐々木雅士が導いたハワイアンズの奇跡
■ 第6節(3/14) ヴァンフォーレ甲府 0-1 いわきFC
JITリサイクルインクスタジアム、7,165人。当時首位を走る甲府との敵地対決で、いわきが真価を見せた。
前半24分、FWオウイエ・ウイリアムが負傷退場という不運も重なる中、急遽投入された加藤大晟が33分、田中幹大のパスを受けてペナルティエリア内でしっかり左足を振り抜き先制。そのまま1-0で逃げ切った。シュート数15対4と圧倒し、甲府の5連勝を止めたアウェイ完封勝利。
ヴァンフォーレ甲府 vs いわきFC試合結果|甲府の連勝を「5」で止めた!いわきFC、交代出場の加藤が値千金の決勝ゴール
■ 第7節(3/21) AC長野パルセイロ 1-3 いわきFC
アウェイで長野を粉砕。後半57分に高橋勇利也、61分に柴田壮介が連続ゴール。90分には山口大輝がダメ押し。長野のフリーキック1発で1点返されたものの、3-1で快勝。いわきはアウェイ3連勝で2位に浮上した。
AC長野パルセイロ vs いわきFC試合結果|いわきFCが長野を粉砕!セットプレーを武器にアウェイ3連勝で2位浮上
■ 第8節(3/29) いわきFC 1-0 ジュビロ磐田
ハワイアンズスタジアムいわき、3,945人。前半アディショナルタイムの45+3分、山中惇希の絶妙なラストパスに反応した山口大輝が右足でゴール右隅を射抜いた。
後半は磐田がペイショット、川島永嗣(GK)を中心に猛攻を仕掛けるも、いわきの体を張った守備が弾き返し続けた。1-0完封。これで4連勝、グループ首位のFC岐阜と勝点で並ぶ快挙を成し遂げた。
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■ 第9節(4/5) 松本山雅FC 2-2(PK 4-5) いわきFC
地域リーグラウンドの折り返し点となる試合。いわきは前半27分に深港壮一郎がゴール前の混戦を押し込んで先制するも、後半51分に金子光汰に同点とされる。さらに後半95分(AT5分)に藤枝康佑の逆転弾で追い詰められた——その直後、後半98分に今野息吹がラストプレーで奇跡の同点ゴールを叩き込んだ。
PK戦でGK佐々木雅士が活躍し最終的に5-4でいわきが勝利し、EAST-Bグループ首位浮上。佐々木は本当に買い切りで…。
松本山雅vsいわきFC|激闘の末に首位ターン!守護神・佐々木雅士が輝いたPK戦のドラマ
■ 第10節(4/14) いわきFC 3-2 福島ユナイテッドFC
3,245人のハワイアンズスタジアムで行われた第2回福島ダービー。試合は6分の先制を許すスタートだった。しかし30分に木吹翔太のクロスから山中惇希がヘディング同点、44分に西谷亮が逆転。まるで前節の松本戦を見るかのような展開だ。
後半70分に加藤大晟(スルーパスから途中出場)に同点とされるも、86分に安在達弥のクロスに芦部晃生が頭で合わせて決勝点。GK佐々木のスーパーセーブも光り、3-2の逆転勝利で「6連勝達成」。
【J3レビュー】福島の激闘及ばず。いわきが「エースの共演」で逆転、ダービーを制して5連勝!
■ 第11節(4/19) いわきFC 1-0 AC長野パルセイロ ←「破竹の7連勝」
3,607人の声援を受け、37分に木吹翔太のヘディング弾。前半終了間際に長野GKが退場となり数的優位も得て、19本のシュートを放ちながら完封。破竹の7連勝、いわきはこの時点でEAST-Bグループ首位に君臨。
【J2・J3地域リーグ】いわきFCが圧倒!木吹のヘディング弾を守り抜き破竹の7連勝
第3フェーズ:試練の後半戦(第12〜18節) 2勝5敗(PK勝2、PK負1)
首位に立ついわきを待っていたのは、残酷な現実だった。
■ 第12節(4/25) 北海道コンサドーレ札幌 2-1 いわきFC
8,308人が見守る大和ハウス プレミストドームでの悪夢。
後半20分、山中惇希の左足シュートでいわきが先制——5連勝中のサポーターが歓喜に沸いた。しかしそこから試合は「試合は終わるまでわからない」の真理を突きつけてきた。アディショナルタイム47分、長谷川竜也のクロスに家泉怜依がヘディング同点。その2分後、今度は長谷川のFKからこぼれ球に大森真吾が右足でゴール——土壇場で大逆転。
後半アディショナルタイムの2失点で、7連勝が終わった。
【J2】札幌が劇的な幕切れ!家泉・大森の連弾でいわきFCの連勝を止める逆転劇
■ 第13節(4/29) いわきFC 0-1 FC岐阜
GW初日、ハワイアンズスタジアムいわき、4,316人。運命のいたずらのような試合だった。
前半30分、いわきDF堂鼻起暉が一発退場。開始30分で10人での戦いを強いられた田村雄三監督は即座にFWを下げてDF遠藤凌を投入し守備体制を整えた。10人のいわきは粘りに粘ったが、後半66分に文仁柱(ムン・インジュ)の左足が炸裂。0-1で敗北。それでも岐阜のシュート19本に対していわきのゴール期待値は「1.02」——10人で戦い抜いた内容は、次節への確かな希望となった。
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■ 第14節(5/2) ジュビロ磐田 1-1(PK 2-4) いわきFC
ヤマハスタジアム浜松、11,052人——シーズン最多入場者数を記録した大舞台でのアウェイ戦。
13分に川﨑一輝に先制を許したいわきは、後半72分に木吹翔太がペナルティエリア中央からゴール右上に突き刺して同点。PK戦ではGK佐々木雅士がまたしても輝き、磐田の2本を止めた。いわき側は田中幹大から4連続成功——4-2で「魂のPK勝利」。
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■ 第15節(5/6) RB大宮アルディージャ 3-2 いわきFC
NACK5スタジアム大宮、11,751人。壮絶な打ち合いは、いわきに軍配を向けなかった。
大宮はGW最終日に9人ターンオーバーという大胆な采配。前半14分に泉柊椰が先制するも、いわきは24分に遠藤凌のヘディングで同点に追いつく。しかし42分にカプリーニが勝ち越し、後半4分にはオリオラサンデーが個人技で3点目。山中惇希のゴールで一時2-3と詰め寄ったが、大宮守備陣が最後まで集中力を保った。
【J2/J3第15節】大宮が壮絶な打ち合いを制す!Oサンデーの豪快弾でいわきを撃破
■ 第16節(5/9) いわきFC 0-1 ヴァンフォーレ甲府
3試合連続の先制失点——甲府にとってはわずか14分の仕事だった。
武井成豪の縦パスから遠藤光がDF裏に抜け出し、GKとの1対1を冷静に決めた。後半はいわきが16本のシュートを放ち(甲府はわずか6本)、期待値(xG)も2.02を記録したが、甲府GK山内康太が壁となってはね返し続けた。「痛恨の3試合連続先制許す」——いわきの課題がはっきり浮かび上がった一戦だった。
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■ 第17節(5/17) いわきFC 1-1(PK 3-4) 松本山雅FC
「ハワスタ最終戦」と銘打たれた一戦、4,512人のサポーターが見守った。
18分に松本の金子光汰にヘディングで先制を許す展開。いわきは69分に加藤大晟が1対1を冷静に仕留めて同点に追いつくも、PK戦では松本GK富澤雅也が奮闘。いわきのキッカー今野息吹とオウイエ・ウイリアムのシュートを連続セーブ。福澤悠太が決めて松本が4-3で制した。
23本のシュートを放ちながらも実らなかった——地力の高さと決定力の差を痛感するPK負けだった。
【J2・J3百年構想】いわきFCvs松本山雅|シュート23本の猛攻実らず…PK戦の激闘を制したのは松本!
■ 第18節(5/23) 藤枝MYFC 0-0(PK 2-4) いわきFC
ついに最終節。藤枝総合スポーツ公園サッカー場、5,242人。
90分間スコアレス。しかしここでGK佐々木雅士が最後の輝きを放った。PK戦でセーブを決め、さらに自らキッカーとしてもゴール。4-2でいわきが制し、連敗をストップ。「魂のPK戦」——まさにこのGKのシーズンを象徴するようなフィナーレだった。
【J2地域リーグ】藤枝vsいわき試合結果!魂のPK戦を制したいわきFCが連敗をストップ!
シーズンを彩った選手たち
GK 佐々木雅士
疑いなく、今季のいわきのMVPだ。4試合のPK戦でチームを救い続けた守護神。「勝点2」を積み上げるPK勝ちを量産した姿は、新レギュレーションへの適応力そのものだった。
MF/FW 山中惇希
得点・アシスト両面でチームを引っ張った攻撃の核。甲府戦(アウェイ)、磐田戦(ホーム)、福島戦(ダービー)など大事な場面でのゴールが光った。
FW 加藤大晟
オウイエの負傷離脱時に急遽登場し決勝弾(甲府戦)、大宮戦での劇的同点弾、松本との第2戦でのゴールなど、途中出場での勝負強さを存分に見せた。
FW 木吹翔太
松本との第1戦(PK勝ち)で同点弾、磐田アウェイでの同点弾、長野ホームでのヘディング弾(7連勝の締め)と、勝負どころでのゴールが多い。
MF 永木亮太
徳島からの移籍組。豊富な経験で田村監督のプランを遂行するリーダー的存在として機能した。
DF 堂鼻起暉
開幕節の先制ゴールなど攻撃参加でも貢献したが、岐阜戦の退場がチームを苦しめた。
DF 中野陽斗
高卒ルーキーながら前評判通りの素晴らしい守備。攻撃参加面でも活躍し、これからの活躍を期待させる選手でした。
課題と収穫
課題:先制を許す展開での脆弱さ
甲府戦(5/9)、松本戦(5/17)、コンサドーレ戦(4/25)と、後半アディショナルタイムや試合序盤の失点が命取りになった試合が多かった。「3試合連続で先制を許す」時期には、チームの修正力が問われ続けた。
課題:シュートは大量に打てるが精度を欠いて得点力不足
0得点が4試合、1得点が9試合と守備力はそこまで悪くないものの、得点が取れずに…という試合が多かった。シュートは打てるが、攻撃のアイディアの少なさもチームの修正力が問われる。
収穫:PK戦での圧倒的な強さ
4勝2敗——新レギュレーション下でPK戦は「実質的な延長戦」であり、これを制することが勝点積み上げに直結する。佐々木雅士を中心とした準備が、他チームに対する明確なアドバンテージになっていた。
収穫:7連勝の時期の完成度
第5節(3/7)から第11節(4/19)にかけての7連勝は、いわきのサッカーが機能した時の「本物の強さ」を証明した。シュート数・ゴール期待値ともに相手を上回り続けた内容は悪くなかった。
まとめ:3位フィニッシュ
首位で前半戦を折り返したチームが、後半戦は5分2敗4分(PK含む)という苦しい結果で終えた。甲府の最終35点、札幌の31点と横並びでの敗れ方は悔しい。しかしこれが、いわきFC 2026年の正直な18試合の記録だ。
2026 EAST-Bグループ 3位プレーオフラウンド展望
― いわきFCの相手は誰だ? ―
プレーオフラウンドとは
地域リーグラウンドが終わり、いよいよ第2ステージが始まる。プレーオフラウンドのルールはシンプルだ。
- 各グループの同順位同士の4チームが集まり、1試合制ノックアウト方式で戦う
- 1回戦(準決勝)で勝ったチーム同士、負けたチーム同士がそれぞれ2回戦(決勝・3位決定戦)を行い、最終順位を決定する
- 引き分けはPK戦で決着(60分制の可能性も含む)
いわきFCはEAST-B 3位。つまり、他の3グループの3位チームとの対戦が待っている。
3位グループの顔ぶれ
EAST-Aグループ ブラウブリッツ秋田 or 湘南ベルマーレ
WEST-Aグループ 徳島ヴォルティス or 高知ユナイテッドSC
WEST-Bグループ サガン鳥栖 or 鹿児島ユナイテッドFC
いわきFCの展望
強みはPK戦力
今季4回のPK戦で4勝——もしプレーオフでもPK戦になれば、いわきには佐々木雅士という「最強の切り札」がいる。1試合制ノックアウトのプレッシャーの中でも、この安心感は大きい。
課題は「先制される展開」
地域リーグ後半で繰り返した「先制を許してからの苦しい試合」が、プレーオフでも出れば致命傷になりかねない。1試合制のノックアウトでは挽回の機会も限られる。立ち上がりの集中力と、相手の攻撃への対応が最初のカギになる。
田村雄三監督の采配
今季最大の強みは選手層だ。加藤大晟の途中出場での決定力、経験豊富な永木亮太の安定感、攻守にわたる山中惇希の推進力——サブメンバーを含めた「チームとしての深さ」が、1試合制ノックアウトで生きる。